ビッチは夜を蹴り飛ばす。
「あっ、あたしがゆーわくしてんのに!」
「うん?」
「うんじゃない!」
なんなんだ硯くん。はぁ、って息を吐いてあくまで気怠げに浅く腰掛けた背もたれにだらしなくもたれて頭を後ろにだらん、てするから、その首筋やらくっきり浮き出た喉仏やら鎖骨やら見るところが多すぎて忙しい。え、なに? あたしがこれは獣になればいいの? ってゆっくり目をハートにしながらよだれを抑えて忍び寄ったらぱし、と手を掴まれた。
「捕まえた」
「え、ゎ」
立ったあたしのことを座った硯くんがぎう、って抱き締めて、その力強さにあわあわする。なんで、なんで! と赤面して混乱してたら下から見上げられた。今日はなんだ。サービスデーなのか? どこかあどけなさが子どもみたいで、アングル可愛すぎてむり、って思ってたらそのまま引き寄せられて正面から膝に乗るような形になる。
「…硯くんあまえんぼなの?」
「んん」
「(どっち)」
どっちでもいいけど最高、って鼻血出そうになってたら胸に軽くおでこを付けられて、あたしの鼓動を確かめるような仕草をする。
「…鳴今日予定は?」
「…え、なんもない。いつもだけど…硯くんどっか行くなら、カルガモしようとしてた」
「おれも今日予定ない」
「何でもない日万歳だ」
「うん」
納得した、とあたしのちょいちょい出る意味不明発言にそれでも頷いた硯くんはすう、ってあたしの胸元で息をする。ちょっとそこで何してんの? って小首を傾げたら、「じゃあする?」って訊かれた。
「…えっち。まだ朝だよ」
「することないし」
嫌だ? って訊かれて、嫌なわけないから曖昧に首を振る。
「…いやじゃ、ないけど、わっ」
そのまま膝の裏に手を差し込まれて姫抱きにされて、重いから離して、ってぽこぽこ硯くんの胸を殴ってたら柔らかな場所に降ろされた。それがソファの上だってわかってて、ソファの上に人をダメにするクッション(ver.ショートサイズ)があるからそれか、と思ったらあたしの上に硯くんが跨ってくる。
「え、あ、こ、ここで、っ?」
「ソファでするの好きでしょ」
初めてした硯くんとのが朝だったから、明るい朝にするそれって嫌いじゃないけど燦々と朝日が降り注ぐそこは何一つ紛らわせないから少しだけ恥ずかしくて、えぁ、って変な声が漏れる。
そんでせっかくまとめたのにこれじゃま、って硯くんが解いたからいつもの髪に戻ってしまって、ゴムを取り返そうとしたらキスで唇を塞がれた。