ビッチは夜を蹴り飛ばす。
「…そうかこれやきもちか」
今やっと気づいたんかい!!!!!!!!
てか何その気付き方、ってぶわあ、と顔に集中する熱が堪らなくて至近距離にあった硯くんの顔を包む。ナカジ曰く芸術作品みたいな顔を眺めながらぁ、って声に出したら硯くんの熱い吐息が少し漏れた。
脱いで、って言ったら今ならなんでも言うこと聞いてくれそうで、だからあたしばっかり嫌だ、と言ったら渋々と言った感じで硯くんがあたしから体を離した。
「…え、ぬい、ぬいでくれるの」
「お前もあとで脱ぐんだよ」
「うえぇ…?」
「今日だけね」
はじまりの朝だから、ってあたしたちの共通の常套句を掲げて頷いたのを合図に、硯くんが着ていたシャツを脱いで、その下に着てたインナーもばさ、と脱いだ。
一瞬、何が起こったかわからなくて本当に気を失ったかと思った。
よく、漫画とかで筋肉質だとか、脱ぐとすごいとかそんなフレーズを聞いていやいやいや、って思ってた。そんなのまやかしじゃん、エフェクトじゃん、過剰評価じゃーんって。顔を振ってた昔の自分を崖から突き落としてやりたい。
硯くんの身体は、すごかった。
肌が綺麗だから白い、と思ってたけど女々しさを感じる色じゃなくて、細いわりに服を着てる時からは想像もつかない男の人って体。程よくついた筋肉にお腹も行きすぎない程度に割れていて、え、われ、お腹割れ、と鼻血が出そうになったらそのお腹に稲妻みたいな古傷があって目がいった。
言わずもがな、あたしを守るために硯くんがボーガンに撃たれた傷。ほんの少しでも遅かったら命は危うかったですよと医者にドヤされたその傷跡。それを見て手を伸ばして指先でなぞったら、上を脱いだ硯くんの手に捕まった。
「…ほら、気にするじゃん。だから脱ぎたくなかった」
「も、気にしない、もん」
痕消えないの? って聞いたら返事がなかったことに余計胸が詰まって、くって泣きそうになったら上を脱がされてわー!!
「今すごい考えごとしてたのに!!」
「なんも考えなくていいよ」
「やだやだっ、あたしばっかじゃん! 硯くんも下脱いでよ!」
「絶対やだ上しか無理」
「不公平!!!!!」
って叫んだけど剥がされたパーカーに続いて触れた唇に何度か啄まれる間、つ、と潜り込んできた指先にゆっくりタンクトップを持ち上げられる。例によって下着をつけてないあたしだからそのままく、と一思いに持ち上げられたらそのまま肌が露わになって、腕で隠そうとしたら縫いとめられて唇を奪われる。