ビッチは夜を蹴り飛ばす。
「ゃだ、ぁ、っん」
確かめるみたいに胸の輪郭をぬるい手のひらで這われたらぞくぞく、って電流が走る。そのまままたくぷん、と中に硯くんが入ってきて、ゆっくり腰を打ち付けられる。その動きがいつもとやっぱり、なんか違くてあまいから。
「硯く、ん」
「…なに…」
「したい」
「してる、今」
「もっと、ぁ、んっ」
ギッ、ギシ、とソファが軋む音がしてお互い裸でいるから繋がってるとこだけじゃなく全部お互いの体温が絡みついて、もうしてるのにもっともっとくっ付きたくてお互いを見ながらセックスする。
これってこんな気持ちいいんだ、って涙が出そうになって、いつも余裕な硯くんも今日は少し上せたみたいに顔が赤くてそれが余計愛しい、好き、愛してるって思ってしまって。
「………見すぎ」
「…硯くんだって見てる」
「俺は見るでしょ」
「なんで! ずる」
いって歯向かったら眼球を舌で舐められた。ぎゃーって叫んで悶絶する。
「ひーん目ぇ舐めないで痛いぃ」
「ふふ」
「ふふじゃな、っん」
再開される甘い律動にまた下半身が言うことを利かなくなって、はぁ、って少し顎を引いて目を閉じたら今度は瞼にキスされた。開いて、その宝石みたいな光が前に硯くんが言ってくれたあたしの硝子玉を捉えていて、目で好き、って伝えたら知ってるって返される。そんな気がした。しただけね。
それでどんどん早くなっていく動きにあ、って顔を逸らして感じてたら一気に上り詰めてって、ぱち、と光が弾けた。そのままはぁ、って熱い息が耳にかかって硯くんも気怠げにのしかかってくるから、たぶんあたしたち今一緒にいったんだ。
一緒に、いったんだ。
それが物凄いことで、感動的で、涙が出そうになってたらはぁ? って顔の横で笑われる。
「…………なんで泣く」
「………硯くんもいま、いったでしょ」
「………うん」
「嬉しくて」
「あ、そう」
素っ気なく返されるけど、顔を両手で包んだら目を伏せて気恥ずかしそうに笑う。
二度と離さない愛しさで、これがたぶん二人で生きるってことだ、って言ったらばかなの、って笑われる。
でもそうだねってあとから付け足してくれたから、たぶんこれが紛れもない幸せで、
他の誰でもないあなたと、ふたりで生きてくってことだ。