ビッチは夜を蹴り飛ばす。
00.硯 司と轟木 鳴
あたしの人生はいつだって夜にある。
深夜2時の世界線、ともと家の空のバスタブで無駄話をすること3時間。もう寝るねって1時前に電話を切って、春の惑いを全面から受け止めた。ここ一週間お母さんは知らない男と出て行ってから帰ってないし、その代わりと言っちゃなんだけどテーブルに置かれた福沢諭吉が3人もいたからここは別に良しとする。
でも、3人いるからって浮かれて一週間で全部使うようなばかはしない。
前にその流れで調子づいて使ったら1ヶ月分だったらしくて残りの一週間ほぼともやゆきから分けてもらうお昼のお弁当のおかずでしか食い凌ぐことが出来なかった。
詳しいことは話さないようにしてる、複雑な家庭環境だってバレたらだってまともに友だちしてくれないかもしれないし、高校生になったからにはあたしはまともの入口に立つ必要があったから。
今週使っていいのは3千円、と今ここで決めてから、バスタブから出て小窓から外を覗き込む。
春の、匂いがする。
轟木 鳴 16歳。
ぬるい風にあてられて、こんな日は決まって最近、深夜2時のコンビニへと繰り出すことを決めている。