ビッチは夜を蹴り飛ばす。
04.作戦という名の会議だよ硯くん!
あんなことがあった手前作戦会議したほうがいいねって硯くんが言うから私も強く頷いたのに、眠れない夜をいいわけにして設けた約束を前に硯くんはあまりにもポンコツだった。
「遅いよ! 硯くん!」
ばしっ、ばしばしっ、てファミレスのテーブルを叩いたらメニューが生き物みたいにぴょこ、ぴょこぴょこって跳ねた。かろうじてあたしを見つけて向かいの席に座る、というか硯くんは倒れ込む。
「いや…今何時だと思ってんの…」
「8時だよ!!」
「8時とか朝じゃん…」
「朝だよ!!」
普通の人が迎える平日の朝、7時なんてモーニングだってのに硯くんは、というかあたしも含めだけど昼夜逆転してるからこの時間は一般人のたぶん深夜2時。完全に起きてるサイクルの場所にない時間に呼び出されたからか硯くんの目はほとんど開いてなくていつも完璧な見た目も今日に限っては寝癖がついていて目もしょぼしょぼだ。服だってオーバーサイズめの襟付き柄サテンシャツではあるけど下は細身のダメージパンツで、いやここはいつも通りおしゃれだった。
あのね、って話しかけようとしてゴンって頭が机を穿つ。硯くん!!
「あと5時間寝かして…」
「昼になる!!」
「8時なんて#&*☻…」
「なんて!?」
意外だ。普段と立場が完全逆転してる。なんてったって硯くん、やる気はないけどバイトの時はいっつもシャキシャキ働いてるからね。あたしもだけど、圧倒的夜行性ってわけだ。まぁ、じゃなきゃあたしたちの人生は重ならない。
ねえ起きて、って揺するのに反応ない限りたぶん寝た。どうしよう、と目についた水のグラスを持ったら「あっれー」とわざとらしい声が耳に飛び込んできた。
わらわら現れた同級生の男数人はテーブルまで来るとあたしの顔を覗き込む。
「鳴じゃんきっぐうー。朝帰りかよ」
「っ、…! 硯くん、」
「彼氏寝てんじゃん」
「相当盛り上がったんだねー」
さすがヤリマン、と笑われてさらりと手首を掴まれる。なんで!
「ちょうどいいや遊ぼうよ」
「ふざけんなごめんだよ」
「またまた」
「硯くん!」
「彼氏寝たフリー?」
「好都合じゃんいこうぜ」
「硯くん───!!!!」
ずるずる、って首にホールドを決められて半ば強引に引き摺られてしまうからがじがじ腕に噛み付くっていうのにうんともすんともしない。どいつもこいつもなんなんだよ犬か。猫か。いや猿か。動物だってもっと場所と時間弁えるってのに四六時中サカりやがって絶倫か!