ビッチは夜を蹴り飛ばす。
「そっから暴力ビッチに格上げよ」
「それはお前が悪いわ鳴」
えーあたしが悪いんすか。
深夜2時のコンビニエンス。ほぼ無人と化した夜の外気は冷静で、酒浸りの母の目を盗まなくても連日足を運んでいる。制服って補導対象ぶら下げて堂々と道路の真ん中を歩くのは楽しくてさ。
お気に入りの小悪魔モンスターリュック、今日はミサイル型になったスケルトンバック。それを背負ってドリンクコーナーでまだ会計の終わってないモンスターエンジンのタブをぷしゅ、と開けたら硯くんはうん、って頷いた。おーいしいっ。
硯くんは深夜のコンビニでアルバイトをしている。
あたしが初めてこのコンビニに来たときめちゃくちゃ気怠げに雑誌コーナーでエロ本を眺めていて、あたしが肉まんください! って叫んでんのに自分で取っていーよ? って怪訝な顔して聞いてくるようなぶっ飛んだ人間だ。
破天荒の血がたぶん兄妹的なんだと思うよ。そんで髪の毛が定期的に黒からグレーになったりを交互する。よくチェーン付きの丸眼鏡とかかけていてバイト終わりを見かけた時私服はおしゃれだったけど緩めのレトロシャツにワイドパンツ履いてたときはそっちの人かと思った。あと喧嘩はお強いようで、コンビニ強盗が来たとき包丁を鷲掴んでおれと遊びましょって笑ったらしい。とりあえず語彙力なくて申し訳なんだけど色々ぶっ飛んでいる肌が綺麗なお兄さんだ。
「そもそもなんでそんな根も歯もない噂立ち始めたんだろーね」
「どぅあからその経緯に関しては1億5000万回は説明したじゃんよ」
「あー、えっちぃ写真拡散したやつね」
「そもそもあれあたしんじゃねえよぉ」
「おれもみたいー」
写真写真、って言うからこれ、って拡散された合成写真を見てから硯くんはちゃっかり私の上半身と見比べて違うねって笑った。見たところKらしい。人間の上半身にそんなサイズのもんぶら下げて肩終わらんのか。あたしなら終わるわ。