ビッチは夜を蹴り飛ばす。
「信じてたのに裏切ったんだ?」
「べっつに。なにそれ。てかそれとこれいま関」
「お前わかんの?」
至近距離で覗き込む。そう身長差のない瞳を真っ向から見たら右左に二度ブレる。
「女の子がさ、男に強姦される思い」
「いやゴーカンて。おーげさな、っ」
「じゃ疑似体験しよっか」
笑って即座に親指を左目にねじ込んだ。男の咆哮の合間にめり込んで、みちみち、という神経と繊維が中で暴れのたまい千切れる音、その奥の髄の髄まで指を差し込んで跪いたらやり易くてもっと、と舌舐めずりをする。ぬちゃ、と触れた生暖かさだけが唯一リアルでほっとする。
「…気持ちいい?」
「ぁ、が、はだ、はだ、せっぉっ」
「またまた。本当はすげーいいくせに」
「.っなさ、ごめ、なさ、ごめんなさいおめんなさいめんなさいめんなさめんなさいごめんなさ」
「人の痛みもわかんねー奴が
人のこと傷つけてんじゃねーよ」
そして一思いに引き抜いたらびしゃっ、と血が飛び散った。
「あっ、あっ、あっは、見えない、見えない、見えない見えない見えない、見えないっ、見えない見えない見えない見えない見えない」
「良かったじゃん風通し良くなって。
見えない方が見えるべきものが見えるかもよ」
血を舐めて嗤ってみせ、のたうち回る男を尻目に片手で抉り出した眼球をキャッチする。そのまま地面に落として容赦なく踏み潰した。
「なんつって」