ビッチは夜を蹴り飛ばす。
「鳴」
「…なに?」
する、と手を掴まれて、そのままにぎにぎされる。あたしの方が女で華奢なはずなのに、硯くんの長くてでも男の人の手に包まれるのはなんとも言えない感覚で。握り返そうとしたら解かれた。
「お前はいらんことばっか言うくせに肝心なことを言わない」
「…そうなの?」
「そうだよ」
「そっか」
「うん」
「硯くん」
「なに」
「なんでお金燃やしたの?」
パチパチ、と火花を散らして夏の空に光が、黒が昇ってく。隣から見た硯くんの青い瞳はどこか泣いてるようにも見えて、
「おれ的にはあの男が人様に嘯いて稼いだ金なんて燃えるゴミ以下なんだよね」
むずかしいことはわからないけれど
たくさんの価値が意味をなくしたその日、
全てが灰になって空に昇ってくのを綺麗だと思った。