ビッチは夜を蹴り飛ばす。
「………それはでも…お前らが先に…」
「俺らの集会の面子利用してお前を拉致ったのは事実だけどあくまでお前の拡散写真を見て下の連中がやったことだ、俺が関与したのは新崎の件があってから」
「…っ」
「今時SNSを通しゃたった一つの言葉で集団が潰しにかかる。周りの意見蹴散らかしてでもみんな自分の正義を振りかざしたい。簡単だよ? そこにカネを織り交ぜりゃ手なんて汚さずとも勝手に他人が動いてくれるから。俺は初めから計画の上きっれーに指標を骨の髄まで陥落させるつもりだった、それを栃野の馬鹿が」
目玉抉り出されて当然だよあいつ、と毒づく海塚に理解が追いつかず首を振る。
「人間の悪意なんてちょっとの法螺で簡単に色付く。
俺はそれにただ発破をかけてやっただけ」
相手が悪かったね、と笑われて感情がない交ぜになり訳が分からなくなる。悲しい、悔しい。そのためにナカジが、結局誰のせいでもないあたしが、と身を起こして立ち向かおうとするけど複数の男に押さえつけられる。
頭から水をかけられて、殴られた傷にしみて悲鳴を上げたら口をこじ開けられた。いい子にしようね、と赤い錠剤みたいなのを見せられて抵抗するのに殴られて口の中まで押し入ってきた指に押し込まれ無理矢理それを飲まされる。
「あ、聞いてよこの廃ビル実はうちの私有地なんだけど取り壊しの予定でさ、重機かなんかで潰しにかかんのかって聞いたらなんと驚き爆破して倒壊させる予定らしい」
「離しっ…やだぁ!!!!」
「けどこの建物の扉は生きてます。鍵をかけることが出来ます。今ここにあるのは俺が持ってるのと同じスペアキー。そこで問題です。この鍵をぼくはこれからどうするでしょーおかっ」
鉄で出来た鍵をチラつかせきゅっと掌に握り締める。どーすんすか、と息を荒げる男に海塚は一瞥をくれ、
あたしを見た。
「捻じ込め」
「え、どこに?」
「どいつもこいつもバカだなー。趣向を凝らせよ、あんだろ女には。男にはねー穴が」
頭が真っ白になるあたしに、複数の男たちもまた、理解したようで海塚から視線を移す。ギラギラとした目で息が荒く、見下ろされてゾッとする。
「ゃだ…やだ、やだ、やだっ、ゃだやだやだやだやだやだやだやだ!!!!!!!!!!!!」
「終わったらさっさと全員出てこないと燃えっぞー」
「え、海塚さんヤんないすか」
「やだよそいつ病気持ってそーだもん」
たのんます、と呑気な声で去っていく背中が遠のいてその声と置かれてる状況のギャップが激しすぎて狂いかける。海塚、と叫ぶあたしにはーい、と出口で振り向いた海塚はやわらかく微笑むと、
「ごゆっくり」
と泣き叫ぶあたしを置き去りに出て行った。