ビッチは夜を蹴り飛ばす。
うぁ、とはだけた服で胸を突き出し、涙目でだらしない声をあげて肩で呼吸をしながら見下ろすと、足の間で伏せていた硯くんの目があたしを射る。
そしてんべ、と舌に乗せた鍵を見せた。
やった、って笑って吐息をつくのに。
なのに、それを手に取って勝ち気に笑うと、硯くんはあたしに覆い被さってその手で頬を引き寄せる。なんで、まって。
「硯く…かぎ…鍵もう取れたよ、ふっ」
涙でぐちゃぐちゃになって、痛くて傷つけられて、この世界が汚くて、ままならなくてもどうでもいい。
もうなんだっていいから、この世界で硯くんとふたりきりになりたかった。