ビッチは夜を蹴り飛ばす。
振り向いた硯くんにおいで、って言われて、目を逸らしながらそ、って手を差し伸べる。きゅって掴んだ手に軽く引かれて、硯くんに座るような形になる。
どうしたらいいかわかんないからどうしたらいいって聞いたら、どうしてほしい? って笑われた。そんなの反則で鼻血が出そうになるあたしを見上げて、綺麗な顔が堪んなくてうーってなる。
で、それを皮切りに唇が重なった。
やさしくてあまいあまいそれに、薄く口を開いたらゆっくり舌が潜り込んできて、上の歯の裏をなぞられてぞくぞくする。
「…っは、ぁ、あたし、のせい?」
「ん?」
「その気じゃなかったよね、たぶん」
「いや別に本当は四六時中したいよ」
「えっ」
絶倫だ、とわなわな震えてたらくすりと笑われる。で、首筋にちゅ、と唇を這わせていく動きがこそばゆくて、片目を閉じる。
「その気だったら優しくできない」
「ん」
「だからその分優しく出来るかも」
今日は落ち着いてるから、の意味が汲めずに背中に硯くんの掌が滑って、そのぬるさや大きな手に震えて少し胸を突き出すようになる。そのまま手がお腹を這って前に回ってくい、と胸の肌色を出して、膨らみに舌が這う。
「…鳴、いつも下着つけてないじゃん」
「ぅ、きついの嫌なんだもん」
「育ったんじゃないの」
「そっ、そんなはず」
だって今までとおんなじのつけてるし、と思ってたけど、そういえばあの、事件というか、栃野に触られ始めてからくらいからなんか身体はおかしかった。育ってるって言い方は違うけど、男の人に触られたらそうなるってのは言い伝えとか都市伝説だと思ってて、でもそれに関与したのに違う男が絡んでるって知ったらあたしたぶん硯くんにころされる。
だから青ざめて太ったのかも、って笑ったら冷たい目で見上げられた。聡いな。絶対わかってるよこのひと、全部。こわ。
食べられるみたいなキスをしながら服を上に脱がされて、薄く開いた青が綺麗できゅ、って吸い付く舌が恋しくて硯くんの首筋に手を添える。熱くて、ピアスがきら、って光ったのに惜しみながら唇を離したら硯くんの吐息がついてきておかしくなる。
そのままショートパンツも脱がされてショーツに薄地のインナー一枚になるから、唇を尖らせた。
「…あたしばっか脱いでんのずるい、」
「うん」
「硯くんも、」
「脱がしゃいーじゃん」
端正な顔に下からそう見上げられ、ほぇ、ってみっともない声が出た。いいよ、っていうからあわわと思いつつ硯くんのネイビーのサテンシャツに手を掛けて、ぷつ、ぷつ、ってボタンを外すけど、覗いた白い鎖骨とか合間の素肌がちらっと見えてどんどん息が上がってくる。