裏切り姫と恋の病
ーーっと。後ろからバイクのエンジン音が聞こえてくる。
それは確かに私の後ろで止まり、誰かが地面を踏む音が耳に入る。
「希乃香ちゃんこんな所で立ち止まって。
中に入んないの?」
四季のメンバーの金髪君が、一人突っ立って外から倉庫を見ている私を不思議に思ったのか、話しかけてきた。
数秒黙って、私は口を開く。
「ねえ、街に連れてってくんない?」
「えっ?別にいいけど……なんで?」
「ちょっと……行きたい所があるの」
嘘だけど。
一刻も早くこんなところから、いなくなりたかった。
金髪君はなんの疑いもせずに「そっか~、じゃあ後ろ乗って」と。
降りたばっかりのバイクに跨がり、渡されたヘルメットを被った私を後ろに乗せて、走り出した。