裏切り姫と恋の病
街をブラついて数分。
路地裏でも公園でも、どこでもいいから。
闇が深く、人があまり立ち入らない様な、暗い場所を探していた。
眠らないこの街は、確かに空はネイビー色をしているのに、全然暗くならない。
人混みから離れ、できるだけ人通りの少ない道を歩いていると。
さっきから、違和感を感じる。
黒い影がヌッと、私の後ろで、私の歩く速度に合わせて歩いている様な気がするのは……気のせいだろうか。
「……」
いや、気のせいなんかじゃない。
いま明らかに。一度止まって、歩き始めた瞬間。
相手も同じ動作をした。
……つけられてる?
でも、なんで。
私なんかつけたって、なにもないのに。
ヒヤッと心臓に、なにか冷たいものが触れた。
恐怖を体で感じ、喉の奥になにか詰まったみたいに、息苦しい。