裏切り姫と恋の病
この人……それに、私を連れ去ろうとした男だって。
なんで私の名前、知ってるの……?
「なんで知ってんの?って、顔だな。」
「……」
「"俺らの世界"じゃ、有名だぜ?希乃香ちゃん」
「……」
「……あの四季の総長、千風唯の女だってな」
「ーーッ?!」
だから私は唯の女じゃないのに。
なんでこんな、見ず知らずの人達に勘違いされてるのよ。
……いや、この人確か今。
俺らの世界じゃ有名……って言ったよね?
ってことは、つまり。
「あ、あなたも……暴走族か何かなの?」
こんなフザけた男の正体なんか、知らない方がいいに決まってるのに。
聞いてしまった。
たぶん、もう引き返せない。
唯と関わったあの日から、私はもう
"あっち"側の人間になってしまったんだろう。