裏切り姫と恋の病
「へぇー、そうかそうか。
なら、仕方ねぇか」
さっきとは違って、聞き分けのいい男が、吸い殻を携帯灰皿に入れると。
欠伸をしながら、私を見る。
「お前が四季とは関係ないって言うなら。
俺が今から四季の倉庫に乗り込んでもいいってことだよな?」
「ーーッ!?」
「おっと。止める権利ないぜ?希乃香ちゃん」
反射的に睨む私を、男は見下ろしながら、笑う。
「……乗り込むって、なんで」
「あれ?四季とは関係ないんじゃねーの?」
「……場合によっては、あるかも……しれない」
敵かもしれない。
この男がもし、四季の敵だとしたら。
唯が……皆が。
それに花音だって危ない。
嫌いになりたかったけど、無理だ。
どうしても、あの時助けられた恩と、皆のことが大好きだった気持ちが胸を熱くする。