裏切り姫と恋の病






可愛い子で思い浮かぶ花音の顔。


私なんかよりも素直で。
言動すべてが可愛い花音に、唯が惚れるのも無理はない。


私じゃ、女として……それに一人の人間として。

花音に(かな)うはずがない。


(あざ)だらけのこの身体で、恋しようと思ったこと自体、浅はかだったの。


私は汚い。

心も体も……醜いの。

だけど。

唯には……花音じゃなくて私に、振り向いてほしかった。



「可愛い子……には、負けますよね、そりゃあ」


「それは、花音のことか?」


「ーーッ!?」


葛西さんは今確かに、"花音"と言った。


聞き間違えなんかできないほど、ハッキリと。


葛西さんの口から、まさか。
花音の名前がでるなんて……そんなの、ありえないことなのに。




< 48 / 82 >

この作品をシェア

pagetop