裏切り姫と恋の病
可愛い子で思い浮かぶ花音の顔。
私なんかよりも素直で。
言動すべてが可愛い花音に、唯が惚れるのも無理はない。
私じゃ、女として……それに一人の人間として。
花音に敵うはずがない。
痣だらけのこの身体で、恋しようと思ったこと自体、浅はかだったの。
私は汚い。
心も体も……醜いの。
だけど。
唯には……花音じゃなくて私に、振り向いてほしかった。
「可愛い子……には、負けますよね、そりゃあ」
「それは、花音のことか?」
「ーーッ!?」
葛西さんは今確かに、"花音"と言った。
聞き間違えなんかできないほど、ハッキリと。
葛西さんの口から、まさか。
花音の名前がでるなんて……そんなの、ありえないことなのに。