裏切り姫と恋の病
「なんで……。
なんで葛西さんが、花音のこと知ってるんですか?」
いや、冷静に考えてみたら
私のことだって知ってたんだ。
花音のことを知っていてもおかしくはない……。
でも、さっきから喉が渇いてしょうがないから。
動揺が、上手く隠せない。
「おっと、この話の続きは後でだ。
そろそろ行くぞ」
ーーピリッと、また葛西さんの雰囲気が変わった。
この人はいくつ、雰囲気を持っているんだろう。
そして本心はどこに、隠してるんだろう。
公園から出て、少し離れたところにある駐車場に
派手な赤いバイクが停まっている。
葛西さんはそのバイクに跨がって、私の胸元に、軽くヘルメットを押し付けた。
「後ろ、乗れ」
「へっ……?あっ、はい」
言われた通り、バイクの後ろに乗ると。
葛西さんが「しっかり捕まってねえと、振り落とされても知らねえぞ」と言い、バイクのエンジンをかけ、走り出した。
暗闇を突き抜けた先に、ネオン街の光が待ち受けていた。
私は葛西さんの後ろで、その光を浴びながら。
どうか今だけは。
辛いことや苦しいことから逃れたいと。
なにも考えないように、目を瞑った。