裏切り姫と恋の病
「総長、その女ってまさか……。」
一人の男が、葛西さんの背中から顔を出している私を見るなり、ごくりと喉を鳴らす。
「あぁ。千風の女だ」
葛西さんが、頷きながらそう言うから。
"違います"と否定しようと開いた大きな口に、葛西さんの手を押し付けられた。
「んーー!?」
「おらっ、お前ら。
俺は今からこいつに話があんだ。
席はずせ。つーか今日はもう帰れ。」
「ですが、見張りの者はどうしますか?」
「今日は俺がここに泊まっていくから安心しろ。
なにかあったら連絡する」
「分かりました」
葛西さんの言葉にすぐに応じる不良達を見て思った。
葛西さん、もしかして。
いや、もしかしなくても、暴走族の中で一番上の人なんじゃ……?
いや、総長って呼ばれてたぐらいだから、そうか、そうだよね。