裏切り姫と恋の病






「まあ座れや希乃香ちゃん。」


身長の高い葛西さんに見下ろされて、落ち着かないし、怖いから、なんだかんだ言う通りになってしまう。


黒いソファにゆっくり腰を下ろす。



ここは四季の倉庫じゃない、四季の敵かもしれない暴走族の倉庫だ。


四季の倉庫は、お家みたいに居座りやすく家具や暇潰しのための遊び道具が置かれていたけど。


ここにはなにも、ない。


いや、あるにはある。


ガレージの中の、真ん中に置かれているソファとテーブル。

壁の隅には本棚が置かれていて、巻数がバラバラの少年漫画とグラビアアイドルの写真集が並べられている。


その他に、銀に光る工具セットが開いたままコンクリートの床にそのまま置かれているし。


お世辞には綺麗とは言えないガレージ。

でも、置かれている物はそう多くないから、汚いわけでもない。


女が興味を示すような物が一切ここにはない。





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