裏切り姫と恋の病





それに葛西さんの、下への態度は上下関係がハッキリしていた。


四季とは全然違う。

四季はチーム全体が家族って感じだったし。

総長の唯はクールだったけど、けっして近寄りがたい雰囲気って訳ではなかった。


だけど葛西さんは違う。


葛西さんは唯よりも笑うしフザけているのに……簡単には近づけない独特な雰囲気をしている。




「希乃香ちゃん足出してっちょ」


「えっ」


ソファに座って、失礼と分かっていながらもガレージの中をじろじろ見ていると。


いつの間にか、私の足下にしゃがみこんでいる葛西さんがいる。


「怪我してんだろ?右足。
 擦りむいてんぞ~。」


「あっ、これくらいの怪我なら別に……」


「いやいや、跡残ったらどうすんだ?
 女の子が傷跡なんか残すもんじゃありません」



ーードクッ。


葛西さんのその言葉に、心臓が微風でそわそわし始める木の葉の様に、静かに揺れる。





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