裏切り姫と恋の病





「ほっといて……」


「あ……?」


「傷跡なんか残ったって別に構わないし……!
 四季のことで話があるんでしょ!?だったらその話だけでいいじゃん!!
 いいよそんな傷、ほっといてよ!」


いきなり大声で叫ぶ私を見て、葛西さんは目を見開き、驚いた顔を隠そうとはしない。


相手の目にどう映るのかなんて、気にしていられないほど。


痛かった。


身体中に残る、あの男にやられた傷跡。


葛西さんは悪くない。

別に私のことなんて、さほど知らないんだろうし

対して興味もないと思う。


だけど……たった一言。


葛西さんの『女の子が傷跡なんか残すもんじゃない』ってその言葉が、私には痛くて痛くてしょうがない。


服で隠すことができているこの傷は、隠せているだけで一生残り続けるのに。


醜い、汚い、傷だらけのこの体。


汚したのは、あの男。



そんなあの男への怒りが、葛西さんの一言で破裂(はれつ)した様な気がする。




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