裏切り姫と恋の病





「……ッ、ハァ」


大声をあげたせいで、息が上がる。



「……」

「……」


沈黙が、胸を突き刺す様に痛い。


「あ、の……取り乱してしまって、すみません」


トラウマに触れられて、急に怒鳴って、自分勝手に謝る私なんか
なにも知らない葛西さんからしたら、きっと頭のおかしい女で。


それでも……この気まずい雰囲気をなんとかしないといけない気がする。


っと、葛西さんが下から私と目を合わせ、目を細める。

睨んでいる様にも見える目付きに。
もしかして怒ったんじゃないかと、焦ったけど。



「悪かったな」


怒ればいいのに。

怒って、いっそ突き放してくれればいいのに。



「……なんで葛西さんが謝るんですか」


「俺の余計な一言で、希乃香ちゃん傷つけたみたいだしなー。」


「……葛西さんって変なの」


「つまり変人ってことか。
 お主、なかなか言うではないか」


「そういう変じゃなくて……いや、変ですけど。
 暴走族の総長が女に謝っていいんですか?」


「不思議なこと言うな~希乃香ちゃん。
 俺だって人間だ、悪いことしたら謝るし。
 とくに女の子には弱いよな~、男だし」


「……」





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