裏切り姫と恋の病
葛西さんは私が落ち着いてくれるまで、話を待ってくれた。
それから数十分後。
テーブル越しに、私の向かいのソファに座っている葛西さんが口を開く。
「単刀直入に言う。
希乃香ちゃん、お前緋鈴に入れ。」
「--ッ!?」
心の準備すら与えてくれない唐突なその言葉に、驚きを隠せない。
説明されてもいないのに嫌でも分かってしまう。
"緋鈴"とは、葛西さんのチームの名前。
さっきこのガレージから出ていった男達が着ていた特効服に、漢字が書かれてあったはず。
「いや、チームには入らなくていい。このチームに女は必要ないからな。
ただ、しばらくこのガレージにいろ。
そして俺らと行動を共にしろ」
「それは……なんでですか?」
「今からその理由を言うが、先に言っとく。
お前に拒否権はない」
「……っ」
「まあもっとも。話を聞いて、お前が拒否できたらの話だがな。」