裏切り姫と恋の病
「あ……の」
「ん?」
「いや……」
葛西さんに言いたい。
花音が唯とキスしてたこと、浮気してたこと、バラしてやりたい。
けど。
それを言って、なんになるっていうの?
それに……そんなの葛西さんが辛いだけだ。
恋人がいるのに他の男とキスをしていた花音のことは
たとえ親友でも許せない。
そんなの……葛西さんのことも私のことも
唯のことだって。
花音は三人の心を踏みにじっているとしか思えない。
額からじっとりとした脂汗が出る。
葛西さんは目を伏せると、タバコに火をつけ、煙を吐き出してから話し始める。
「言っておくが、俺は特別花音のことが好きって訳じゃねー」
「……っ!?」
「だから浮気しようが、しまいが、そんな事はどうでもいい。」
平然と言ってのける葛西さんに、開いた口が塞がらない。