裏切り姫と恋の病
「好きだから……付き合ってるんじゃないんですか……?」
「いや?」
「じゃあ……なんで」
こっちは気持ちがいっぱいいっぱいで、混乱しているのに。
ふざけているのか、葛西さんは口の形を丸にし、プカプカと器用にタバコの煙で輪っかを作り出す。
短くなったタバコを、灰皿に押し潰した。
「前行った、合コン。
可愛い子いっぱいいるからって、呼ばれた合コンに行ったら、花音がいた」
「……は、はあ?」
花音が合コンなんて……ありえないって言いたいけど。
学校に行ってない私が、花音の行動を知るわけがない。
私以外にも花音には友達がいる。
その子達は皆派手で、どちらかと言えば清楚系な花音だけど、顔がいいからギャルに囲まれても浮くことはなかった。
「その時、一目惚れされてよ。正直その場限り女見つけるつもりだったんだよ、 女って付き合うとめんどーだから。
一度は断ったけど、『好きじゃなくてもいいから、お願い。』って可愛い子に言われたら、そんなの断る理由もなくなるじゃん?」
「……」
「確かに花音はいい女だけど、やっぱ好きになれなかったし、好きにならなかった俺が悪いんだ、別に恨むつもりもねー。」
「……」
「だが、相手が悪いな。
よりによって四季の総長、千風唯ときた」
「……」
「仮にも俺の女だ。
別のチームの奴に、女取られて黙ってるなんて、緋鈴の総長としての面子が丸潰れだ。」
「確かに……」
「だからと言って、喧嘩とかするのめんどーだし。
ほら、俺ってどっからどう見ても、平和主義だし?」
いや……どっからどうみても、かなりヤバめな人だよ。