裏切り姫と恋の病
正直な話、なんで私がこんな不良に振り回されなきゃいけないのか、謎だけど。
でも、家には帰りたくない……。
帰るくらいなら、この男に協力した方がまだマシ。
だけど。
本当に私は、唯や花音を裏切ってまで
この人についていけるのか、不安だ。
「心の準備……したい」
長い足を組んで、私の目の奥をを覗く様に見てくる葛西さん。
そんなに見つめられると、変に緊張してしまって、喉の奥が渇く。
テーブルの上になんとなく手を置いてみた。
すると。
葛西さんは私の手の上に自分の手を乗せてきた。
--ドクン、と。心臓が体の奥で響く。
「なあ、希乃香」
"希乃香"
色っぽい掠れた葛西さんの声が、余計に心臓を苦しめる。
なんで急に、呼び捨てなんだろう……。
恥ずかしすぎて、今にも死んでしまいそうだ。