裏切り姫と恋の病






「……四季の総長ってーのは、どうやら見る目がないらしい」


「……」


「俺はお前の方が、花音よりもずっと可愛く見えるけど。」


「……っ」


「もっと自分に自信持てよ。
 お前、自分が思ってるよりもずっと、可愛い顔してんぞ」


「……うそ」


「嘘じゃねーよ。
 その証拠に、俺の下の奴、ガレージから出ていく際、お前の顔みた瞬間、顔真っ赤にしてたぐらいだぜ?
 さっき言ったろ?『惚れられたな』って」


「……」


「しっかし、そんな可愛い顔して生まれてきておいて、自分に自信がないなんて変な奴。
 もっと違う出会い方してたら、俺、お前にぞっこんだったかもしれねー」


「……かさい、さん」


「そう思うと、あれ?希乃香ちゃんって俺のタイプど真ん中ってこと??
 どーする?結婚する??」


「……遠慮しときます」



「この俺を振るなんて、やるね~」と葛西さんは笑いながら、またタバコに火をつけ始める。


ポロっと涙がでてきた。


タバコの煙が目に染みたかな?


……ううん、違う。


本当は、タバコの煙のせいにしたいだけ。


だって葛西さんが、優しいんだもん。


優しくされたら、また人を好きになってしまうから、あんまり優しくしないでほしい。


裏切られるのは、もう嫌だから。




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