裏切り姫と恋の病
「春は……優しいんだね。」
どっちでもいいと思う。
私のため、緋鈴のため。そんなのはどっちでも。
この人が優しいことには変わらないのだから。
お互いに得をする優しさだ。
……花音とは違う。
花音は優しさに見せかけた、ただの裏切りだ。
「やーっぱ……希乃香ちゃんは笑ってた方がいいんじゃん?」
言いながら、春はククッと喉仏を上下させながら着ていた黒のレザージャケットを私の肩にかけた。
「着てろ。
俺のだって証拠に、な」
「……っ。
こんなことしていいの?
四季に喧嘩売ってる様なもんじゃない?」
「おバカ、喧嘩売ってるに決まってんだろ。
お前もお前で花音に一発やり返してこい」
「……なに物騒なこと言ってるの」
「俺の匂い付きだ。
花音は気づくと思うぜ?」
「気づかせ方が最低だよ……」
「なんとでも言え」