裏切り姫と恋の病
微笑む春の匂いに包まれ、肩からズレ落ちそうな大きなジャケットを整えて、私は一度視線を足下に落として、もう一度春と目線を合わせた。
「私を巻き込んだからには……責任とってよね。」
「せ、責任?!や、やだ希乃香ってば気が早いんだから……」
「ちょっと春!?こんな状況でふざけないでよ、こっちはこんなワケわかんない状況になって頭がこんがらがりそうだっていうのに!」
「ハハッ、冗談だって。
ちゃんと最後まで付き合う……つーか、巻き込まれてるのは希乃ちゃんだから、最後まで付き合わせる」
「……」
「なんだったら俺ら、本気で付き合っちゃう??」
ケラケラ笑う春ってば、ほんとチャラい。
やっぱりジャケット受け取るべきじゃなかったかな……。
それでも、今の私にはこのジャケットが盾の役割を果たしてくれているみたいで、四季の倉庫に戻る勇気の後押しをしてくれている気がするんだ。
「そんじゃ、後は任せた」
「う……ん、が、頑張る」
「すっげー棒読み。
まあいいや、希乃香ちゃんなら大丈夫っしょ。」
「春ってば最後まで適当ね」
「俺はいつだって本気だわ」