裏切り姫と恋の病
春のおかげで強張った私の顔も和らいできて、少しの沈黙と共に彼は手だけを軽く振ってその場を後にした。
軽快な春とは違って、重い足取りの私も四季の倉庫に戻ると、見慣れたメンバーが心配そうに私に駆けよってきて、いつも通りの光景にホッと一息吐く。
「希乃香ちゃん?!どこ行ってたんだよ今まで!」
「昨日あれから電話なかったし、俺らすっげー心配したんだからな」
「う、うん。ごめんね心配かけて」
これから敵になる彼らに、お礼を言うのもおかしな気がする。
それでも昨日のあの出来事の前までは、私の仲間であったのは確かだから、冷たくなんてできない。
罪悪感で今にも押し潰されそうになりながら、上手く吸えない空気を無理矢理体内に流し込んで、口を開こうとしたその時。