裏切り姫と恋の病
皆に聞かせる内容ではないと、頷いた花音と奥の部屋で話すことに。
段ボールが重なって置いてある狭い部屋のドアを閉めると、自然と出るため息は少しでも緊張を和らげようと必死だ?
仲間であるはずの私が、唯に警戒され、守られる対象は花音になった。
「そのジャケットって……」
数分続いた沈黙を破ったのは花音からだった。
友達なのに、お互い少し距離を取って話始めるから、気まずさは拭えない。
「葛西晴臣」
「……っ、」
「花音の彼氏のだよ。」
見覚えのあるジャケットに、春と関わりがないはずの私が彼と同じものを着ているのだから、倉庫に戻ってきた私の存在よりもこのジャケットのことをずっとチラチラ見ていたのは気づいていた。
「ど、……どうして希乃香が葛西君のジャケットを着てるの!?」
「花音こそ、どうして唯とキスしてたの?」
「……」
「私が唯のこと好きだって……知ってるくせに。」
友達だと思ってた。
ううん……今でも思ってる。
でも。
本音を隠す花音を友達だと思ってるのは私だけなのかもしれない。