ボーダーライン。Neo【下】
「えっ!?」
「うそみたい……伯父さんが爆笑するなんて」
茜の送る横目に、僕は引きつり笑いで返した。
「ーーほんっと、やってくれるよなぁ~檜は」
社長は腹を押さえ、悪い悪い、と申し訳程度に謝った。
「そうかそうか、分かった」と言い、息を整えている。
「それじゃあ、今すぐの対応は無理だから。最低でも三、四日の猶予は貰う。報道陣を集めて会見を開こう」
ーーえ、
「……え、それじゃあ?」
「ああ。結婚を前提にきっちり謝罪する、それで良いんだろ?」
「……っ、はい」
熱愛発覚の三週間前が嘘みたいだ。あのキレた社長を思い出し、僕は真顔で固まっていた。
まさかここまでスムーズに許して貰えるとは思っていなかった。
社長は黒革の手帳を開き、予定を確認し始めた。そして会見は四日後の月曜だな、と独り言のように漏らす。
「……俺。本当に結婚しても良いんですか?」
「なんだ? 反対して欲しかったのか?」
ーーまさか!
「いや、そういう訳じゃ無いんですけど。こんなアッサリいくとは思ってなくて」
僕は戸惑い、口元を押さえた。ともすると顔がにやけそうになるのだ。
幸子との結婚まで、一つ一つの問題をクリアしている、その実感が湧いた。