ボーダーライン。Neo【下】
「ちょ、やだっ、慎ちゃん! やめてよっ」
ーー恥ずかしいってば。
周囲からチラホラ視線を集め、僅かに頬が熱くなる。慎ちゃんは相変わらず、真面目な人だった。
何とか彼の顔を上げさせ、口元を緩めた。
「謝るのは……あたしの方だよ」
「え……」
「先に慎ちゃんの信頼を裏切ったのはあたしだから。あたしが先に謝らないと」
「サチ」
「ごめんなさい」
言ってから頭を下げた。
「謝ったからって許されるとは思ってない。でも、あの時慎ちゃんを深く傷付けて、怒らせた事、ずっと謝りたいと思ってた。本当に、ごめんなさい」
冷房の風を受け、パーマをかけたボブヘアーが耳から下に流れた。あたしはゆっくりと顔を上げる。
「サチ、髪……切ったんだな?」
「うん」
「俺は長いのが好きだけど。短くてもやっぱりサチは可愛いな」
「……えぇ、なに急に」
「いや」
慎ちゃんは目を伏せ、アイスコーヒーを飲んだ。
「テレビでサチの髪が短くなってるのを見てさ、その時初めてサチが居ないのを寂しく思った」
「……」
「ようやく、罪悪感にも気付けた」
ーー空港での、動画の事?
あたしはカフェラテのストローを回し、カラカラと氷がぶつかる音を聞いていた。彼に掛ける言葉を探していた。