ボーダーライン。Neo【下】
「いや。いいよいいよ。なんか歩いてて懐かしかったし、結構周辺変わったよね?」
「うん。前はもっと田舎道だったから。
あ、檜。お休みはあれ以来なんでしょう?」
「うん。でもまぁ、何だかんだ謹慎とか有ったし、そんな久々って感じはしないけど」
「そっか」
庭を歩きながら話し、サングラスを外した。
幸子に続き玄関をくぐると、彼女の父親と目が合った。
「お、邪魔します」
“ワン……!”
「おおぉ……っ」
ーーい、犬がっ!
玄関の三和土《たたき》に割と大きな柴犬が座っていて、彼女の父親が飼い犬にご飯をあげていた。
お母さーん、と幸子が居間へ呼び掛ける中、僕は「お久しぶりです」と父親に挨拶をした。
「秋月 檜です。今日はお招き頂き、ありがとうございます」
「ああ、いやいや」
以前と変わらず顔は恐いけど、雰囲気は幸子と一緒で穏やかだ。
「えっ! マジマジ、もう来たの!??」
廊下の奥で若い男の声がした。
彼女の父親が控え目に会釈し、部屋に入って行くと、それと入れ違いに誰かが駆けて来た。
ーーああ、弟さんか。
幸子から聞いた話では、僕より確か三つ上だったはずだ。
丁度幸子がスリッパを並べてくれた時、弟さんと目が合った。