ボーダーライン。Neo【下】
ーーあ、弟さんも童顔なんだ。
パッと見、大学生だと言われても違和感が無いほど若々しい。
幸子の弟さんとは、実は二度目の挨拶で庭ですれ違った事が有るのだが、正面からしっかり見るのはこれが初めてだった。
「どうも、初めまして。秋月 檜で」
「うおぉぉお! 本物やっべー!! なにそのオーラ! ちょーカッコいぃー!!」
ーーは?
思わず僕は目を点にした。
「ちょっと悠大っ!!」
「いって!」
「そこどいてよ、檜が上がれないでしょ!??」
「うっせぇ、鬼ばばぁ」
幸子に足をはたかれ、弟さんは悪態と共に奥へと引っ込んだ。
「ごめんね、檜」
「ふ……っ」
ーーヤバい、あのキャラ。かなりウケる。
「なに? どうしたの?」
笑いを堪えていると、幸子が首を傾げた。
「いや、弟さん、変わってないなぁって」
「え?」
「確か俺より三つ上だっけ?」
「そうだよー。とても二十六には見えないでしょ?? いつまで経っても馬鹿なんだから」
「アハハっ!」
勧められるスリッパを笑いながら履いていると、パタパタと廊下を駆ける音が聞こえた。
「いらっしゃい、外暑かったでしょう??」
その声に過去の記憶が蘇り、緊張がピリリと走り抜けた。