ボーダーライン。Neo【下】

 以前のようにショートカットを首筋で撫でつけ、幸子の母親が溢れんばかりの笑顔で立っていた。

「あ、はい。あの、お久しぶりです。秋月 檜です。本日はお招き頂き、ありがとうございます」

 淀みなく挨拶を告げ、何とか一礼をする。

「まぁまぁ秋月さん! 本当に立派になって! さぁさ、リビングにどうぞー??」

「あ、はい」

 依然として堅い表情のまま、幸子と共にリビングへ向かう。

「檜、緊張してるの?」

「かなり……」

「ふふっ、大丈夫だよ? お母さん、もう完全に許してる感じだから」

「……うーん」

 そうは言われても、あのインパクトだけは忘れられない。

 とは言え、ビビっていても先へ進めない。三度目の訪問にして、許しを得る自分を想像し、よし、と気合を入れた。

 リビングに入って、あれ? と思う。

「なんか前来た時と雰囲気違くない?」

 それに以前通されたのは和室だった。

「あ、うん。去年なんだけどね。客間とリビングを一緒にしてリフォームしたの。ほら、弟夫婦が結婚して一緒に住むようになったから」

「ああ、なるほど」

 ーーそれでこんなに広いのか。

 部屋全体を目で一周するが、何畳あるのか想像もつかない。
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