ボーダーライン。Neo【下】

 ソファーにコの字型で囲まれたガラステーブルの他に、恐らく今日のために用意した大きな卓袱台(ちゃぶだい)が座布団と併せて置いてある。

「檜はここに座って?」

 幸子に言われた場所に腰を下ろすと、はす向かいの父親と目が合い、再びどうもと会釈した。

 左手側の磨り硝子の扉から幸子の母親が順に料理を運び、どうやらそこがキッチンらしいと理解する。

「あ、お母さん。あたしも手伝うよ」

「いいから、幸子は秋月さんと一緒に座ってなさい。由美ちゃんと二人で大丈夫だから」

「……あ、うん」

 幸子が右隣りに座り、だって? と肩をすくめる。

 ガチャンとリビングの扉が閉まり、さっき会った弟さんが座布団の前で、「俺どこ?」と幸子に訊いた。

「悠大はそっち」

 僕の左隣りに弟さんが座った。

「あの、凄く疑問なんですけど」

 ーーん?

 急に彼から話し掛けられ、左を向いた。

「何で姉ちゃんなんですか?」

 ーーえ。えぇ……っと………。

「……何でと言われても」

 どう答えて良いか分からず、首を傾げた。

「だって檜くんって尋常じゃないぐらいモテるでしょ? あの笹峰優羽に何回も告られたってホント??」

 ーー笹峰さん、か。たとえ本当でも、名女優さんだから……軽々しくは答えられないな。

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