ボーダーライン。Neo【下】
「で、新居は決まったの?」
「いや、まだ検討中。寒くなる前には引っ越したいと思ってるんだけど……三軒で迷ってて」
「あのねぇ、檜。そんなにのんびりと構えてたら、幸子ちゃん妊娠しちゃうわよ?」
「……え、」
大っぴらに物申すのは、母さんだ。
「妊婦に引っ越しはキツいんだから、早め早めに済ませないと。カイと、あと、陸ちゃんと陽介ちゃんにも手伝って貰って、来月には引っ越しなさい」
「……ハァ。分かったよ、また幸子とも話し合う」
「そうね、それが良いわ」
「あ! 檜くん!」
傍らより名前を呼ばれ、振り返る。
「誰? 知り合い? 美人さんね?」
「ああ、うん。幸子の親友」
「そう。……それじゃあまた後でね?」
「おう」
美波さんに呼ばれ、それまで話していた母さんが片手を挙げ離れていく。
「あ、ごめんね? 今誰かと話してた?」
そう言って、パーティー用のワンピースを着た美波さんが申し訳程度に柏手を作った。
パーマのかかったロングヘアをひとつ結びにアレンジし、相変わらずの美人だ。
「ん? ああ。良いですよ、俺の母親なんで」
「え! あ、そうなんだ!?」
美波さんと共に母さんを見やると、父さんと揃って今度は幸子の両親に話し掛けていた。