ボーダーライン。Neo【下】
「あんた、ホント失礼よねっ。いき遅れないわよ、適齢期を待ってるだけで」
「いやいや、適齢期って。美波さん、せっかくの美人なのに、この先も仕事漬けなんて勿体ないですよ」
「えっ」
途端に美波さんの機嫌が直る。
「やだ、どうしよう、鮫島。あのHinokiに美人って言われちゃったっ!」
「社交辞令でしょ? 空気読みましょうよ、二葉さん」
「なにを〜?!」
二人のやり取りにアハハと笑っていると、背後からおっとりした声が届く。
「檜っ! 終わったよ?」
振り返ると、淡いピンクのカクテルドレスに身を包む幸子の姿があった。
ーーおお、これは……っ。
僕は愛らしい幸子を見て、口元を手で覆った。
ーーヤバい。想像以上に可愛い……っ! 抱きしめたいっ!
勿論、人前なのでそんな事は出来ない。
本当に三十二歳かと聞きたくなった。
「……ああ。うん。すげー良いじゃん?」
隣りに並んだ幸子の肩を、さりげなく抱き、耳元に囁いた。
「凄い可愛いよ?」
「ありがと」
ナチュラルな化粧に愛らしいえくぼを浮かべ、幸子が幸せそうにはにかんだ。その仕草すら僕を虜にさせる。
「サチ~!! 凄い良いじゃんっ、似合ってる!」
「美波っ」
ーーあれ……?
スルッと僕の手から離れ、幸子が僕から離れて行く。楽しそうに美波さんとガールズトークを始めた。
ーーまぁ、仕方ないか。会うのは数ヶ月ぶりだろうし。