ボーダーライン。Neo【下】

 ーーあれ? いつの間にかあんな所にいる。

 僕は透さんと共に、美波さんと話す彼女に歩み寄る。

「幸子っ! こちら、いつも何だかんだでお世話になってる、」

「ーーへっ? うそっ、坂城 透だっ!」

 ーーえ?

 幸子の目は隣りにいる透さんにのみ向けられている。口元に手を当て、息を呑んでいる。

「そうそう、何だかんだでお世話してる坂城 透です。初めまして?」

 そう言って透さんが握手を求め、幸子もおずおずと手を出した。

 緊張しているような幸子の様子に、眉をひそめていると、

「あの! いつもドラマや映画、見てますっ」

と突然ファンみたいな事を言い出した。

 ーーえ、え? 何これ何これ?

「そうなんですか! ありがとうございます。いやいや、檜が夢中になるだけあって本当に可愛らしい!」

「いえ、そんな……」

 恥ずかしそうに頬を染める幸子を見て、僕はあからさまに顔をしかめた。

 ーーはぁ!? 何その反応。

「ちょっと透さん。来て早々、嫁を誘惑するの、やめて貰えますか??」

「……え、檜マジ切れ?? やだなぁ、男の嫉妬は。見苦しいよ~?」

 茶化して言うので、それ以上何も言えず、グッと口を噤んだ。
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