ボーダーライン。Neo【下】
ーーだいたい幸子も幸子だ。
今度は無言で彼女に横目を向ける。
すると幸子はキョトンとし、愛らしく小首を傾げた。
ーー何その仕草、可愛こぶってんのか?
「幸子。透さんのファンだったの?」
「ん? うん……まぁ、結構。あたしよくドラマ見るからさぁ」
ーー知ってる。
「彼の出てるやつは特別面白いし、演技も凄く上手なんだよっ??」
「へぇ、あっそう」
「坂城さんと仲良しなんて、檜凄いよー」
そう言ってキラキラとした笑みを向けられるのだが、ちっとも嬉しくない。
第一ファンだなんて、今の今まで一度も聞いた事がない。
僕自身、そんな話を振ってこなかったのだから無理もないが、一緒に生活しているのに、やっぱりまだまだ幸子には謎がある。
「あ! 透さん、ご無沙汰してます!」
料理の皿を手にしたまま、陸や陽介、カイが集まって来た。
おう、と手を挙げ、透さんが笑う。
「いつぞやの男子会以来だっけ?」
「はい。あの時はヒノキの事で、色々とお世話になりました」
「いいっていいって! てかカイの料理が美味すぎて、俺はそっちのインパクトの方がデカいけどな?」
「アハハ、ありがとうございます」
「透さん。檜とばっかりじゃなくて、たまには俺らとも飲んで下さいね!」
そう言って陸と陽介が彼をおだてている。
ーーやれやれ。