ボーダーライン。Neo【下】
すぐそばで声を掛けられ、振り向くと茜が立っていた。ベージュ色のワンピースを上品に着こなし、柔らかな笑みを浮かべている。
「……茜」
「そう言うわたしも幸子さん狙いで来たんだけど、いま個人的に話しても大丈夫?」
「ああ」
僕にいちいち許可を取るところが茜らしい。
「……幸子さん、お久しぶりです」
突然、茜から声を掛けられ、幸子は少し驚き、身構えていた。
「……あ。ええ、お久しぶり、ですね?」
「今…。少しだけお話させて貰っても宜しいですか?」
「え?」
「ここじゃ何なので。出来れば向こうで」
そう言って、茜は少し離れたテーブル辺りを指差した。
「あ……、ええと」
幸子は心許ない目を僕に向けた。僕は大丈夫、という意味を込め、「良いよ?」と頷いた。
「……じゃあ。はい」
幸子は小さく微笑み、茜に付いて行く。
お盆を持ったボーイからシャンパン二つを受け取り、茜はその一つを幸子に手渡していた。
きっと昔のわだかまりを解消させるために、話をしているんだろう。
僕は、戸惑いから一転、笑みを咲かせる幸子を見て、フッと口角を上げた。
***