ボーダーライン。Neo【下】
◇ ♀
「急にごめんなさい。みんなの前だとどうしても言いづらくて」
「いえ……」
あたしは目を伏せ、グラスの中の小さな泡を見つめていた。
上河さんと話をするのは、別れを強要されたあの日以来だ。だから少しだけ、緊張していた。
上河さんはシャンパンをひと口飲んでから話し始めた。
「昔。幸子さんに檜と。……いえ、檜くんと別れるように言った事、謝ります。ごめんなさい」
ーーえ。
勢いよく頭を下げられ、言葉を無くした。
「檜くんがどれだけあなたを好きだったか、なんて。本当は出会った時から知ってたんです」
「出会った時、から?」
上河さんは申し訳なさそうに言い、顔を上げる。
「はい。あの年の、クリスマスの二週間前。檜くんが母の店にあの向日葵のネックレスを買いに来たんです。
とても高校生が一括で買える金額じゃ無いのに、それを買うから置いてて欲しいって、わたしに頼んで。
二週間後のクリスマスに必ず買いに来るからって」
「……そう、だったんですか」
あの時の檜を思い、あたしは胸を押さえた。キュッと心臓が痛くなった。
あたしは教師であるにも拘らず、高校生の彼を好きになってしまい、休み続きで中々会えない彼にやきもきしていた。