ボーダーライン。Neo【下】
◇ ♂
「じゃあラスト、行きますよー!!」
専属のカメラマンがレンズを覗き、片手を上げた。ガーデンウェディングに集まった者、みんな揃っての記念撮影が行われる。
「はい、オッケーでーーす!」
それぞれが晴れやかな笑みを浮かべ、笑い声は澄み渡る秋の空に溶けた。
僕は隣りで愛らしい笑みを向ける彼女を見つめ、今日まで歩んだ道のりをぼんやりと思い返していた。
幸子と初めて出会ったのは、十六歳の春だった。
桜色のワンピースを着る彼女に、僕は一目惚れに近しい感情を抱いた。
八つの歳の差に教師という立場で接する彼女。
教師を好きになるなんて、歳上なんて有り得ないと。あの頃は自分の気持ちが中々自覚出来なくて、それでも興味を惹かれる幸子に、僕は自然と近付いていた。
好きの気持ちをようやく自覚し、何度も心を痛めた。
不屈の想いで何とか幸子を手に入れるものの、まだ若かった僕は、彼女の心の裏側に気付いてやれなかった。
別れから数年を経て、再会した幸子は既に婚約済み。