ボーダーライン。Neo【下】

 ◇ ♂

「てか、桜庭先生ってあの停学の元凶になった先生でしょう?」

 身もふたもない言い方に、僕は向かいに座る母さんをジトッと睨んだ。

「元凶って……。何だよ、その言い方。反対なのかよ?」

「べっつに〜? じゃあ、あんたはその桜庭先生に会うためにわざわざ帰って来たって事?」

「そうだよ?」

 僕と母さんのやり取りを見て、婆ちゃんがうふふと笑いながら少し冷めた紅茶を運んでくれる。そのまま、母さんの隣りの椅子を引いた。

 ちょうど朝ご飯を食べているところだ。

「ふぅ〜ん。桜庭先生ねぇ……?」

 母はしかめっ面で昔の記憶を辿っている。

 昨日国際線を使って、ホルボーンにある祖父母の家へと帰って来た。

 僕の両親である美麗(ミレイ)良次(りょうじ)は、僕とカイが成人して間もなく、海外ビジネスを理由にロンドンへ発ち、今はこの親元で暮らしている。

「……ああ、思い出した! 桜庭先生って、確か二年の時に受け持って貰った、あの頼り無さそうな女の子よね? 学生さんみたいな感じの。檜はああゆうタイプが好きなんだ?」

「んだよ、いちいち(かん)に触んな?」

「別に他意は無いわよ。で、会えたとしてどうするの? また付き合うの?」
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