ボーダーライン。Neo【下】

 伏せ目がちの瞳を覗き込まれ、はにかんだ。

「ううん。あとね……」

 あたしは声を潜めて耳打ちした。

「ベッドの中」

 言ってから檜の顔を確認すると、ぱちりと目を瞬き、頬は少しだけ赤くなっていた。

「嘘じゃないよ? それに、良い子ぶったりもしてない……これは、本音」

「う……ん、なんか。ヤバいな……俺、俄然ヤル気出てきた」

 宙空を見つめながら何か妄想し、檜が再び座り直す。

「ふふっ、檜はエッチでスケべだもんね?」

「男がスケベで何故悪い?」

「あははっ」

 一頻り笑った後、あたしは檜に寄りかかった。肩に頭を預けると、彼の手がそっと肩を抱いてくれる。

「檜さ……。あたしの事、よく嫌いにならないね?」

「何だよ。まさか嫌われようとしてる?」

「そんな訳無いでしょ。そうじゃなくて、あたしが男だったら、あたしみたいな女は絶対に選ばないなって」

「何で?」

「……だって。結婚するって保険が有るのに。あたし。あなたの体を求めて、勝手に突き放して。酷い事も沢山言った。
 それなのに…。あなたとまた連絡を取り合いたいだなんて……狡い事もいっぱい考えてた」

「……まぁ。突き放されたのには傷付いたけど、その後メールとか電話とかしてくれて。俺は単純に嬉しかったけどな」

 あたしは笑って彼の顔を見上げた。

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