ボーダーライン。Neo【下】

 あの頃みたいに、あたしの気持ちを汲んで言っているんじゃない。

 本心から結婚を望んでいるのだと、そう理解した。途端に唇が震え、喉奥から何か込み上げるものを感じた。

 鼻の奥がツンと痛くなり、キュッと唇を噛んで涙を堪える。

 ーー泣いちゃだめだ。泣いたら勿体ない。

「俺と……結婚してくれる?」

 今にも泣きそうになるあたしを見て、檜が切なげに眉を寄せた。

 震える唇を噛み締めたまま、何とか一つだけ頷けた。

「……本当に?」

「……ん。あたしは、あなたの……っ。
 お嫁さんになりたいっ」

 そう言って無理やり口角を上げるが、やっぱり目の端からは涙がこぼれ落ちた。

 視界が滲むのが嫌で、ぱたぱたと瞬きし、クリアな世界で檜を見つめていた。

「ハハッ、やっぱり泣き虫」

 檜は顔をクシャッと崩し、彼らしい笑顔のまま、あたしの涙を指先で拭ってくれる。

 それから何を思ったのかスクッと立ち上がり、両手を胸の前でグウにしたかと思えば、天に突き上げて大声を上げた。

「やっっっ、たーーっ!!」

 ーーえ、

「プロポーズ大成功だよ、やったぁーーっ!!」

「え、え!? ちょ、ちょっと檜っ! 人いっぱい見てるっ! も、恥ずかしいからやめてっ」

 慌てて立ち上がり、彼の腕を掴んで制止するが、彼は満面の笑みでハイテンションに叫んだ。
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