ボーダーライン。Neo【下】

 もう片方の手にはあたしのスーツケースを持ち、肩には鞄を提げている。

「あの、檜っ。荷物、自分で持つよ?」

「いーからいーから、これぐらいさせて?」

 彼に手を引かれたまま、あたし達はようやく広場の出口へ差し掛かる。

「なぁ、幸子」

「うん……?」

「俺たちの間に。今後、隠し事は無しにしような?」

 ーーえ。

「幸子がさ。俺の知らないとこで悩んだり、悲しんだりしてるの嫌なんだ。だから、出来れば色々相談して、俺を頼って欲しい」

「うん……」

 繋がれた手を見つめ、やんわりと口角を上げた。

「分かった。もう隠し事はしない。これからはちゃんと言うね?」

「おう」

 タクシーでコヴェント・ガーデン駅に向かい、電車に乗った。

 何処に向かっているのかを訊ねると、予想通り、ホルボーンにあるお婆ちゃんの家だと言う。

 ーーじゃあさっきの電話はヨーコさんか。

「今日はさ。幸子に……特別に会わせたい人がいるんだ」

「会わせたい人?」

「そっ」

 そう言って檜はどこか得意げに、にんまりと笑った。

 ***

< 27 / 188 >

この作品をシェア

pagetop