ボーダーライン。Neo【下】
もう片方の手にはあたしのスーツケースを持ち、肩には鞄を提げている。
「あの、檜っ。荷物、自分で持つよ?」
「いーからいーから、これぐらいさせて?」
彼に手を引かれたまま、あたし達はようやく広場の出口へ差し掛かる。
「なぁ、幸子」
「うん……?」
「俺たちの間に。今後、隠し事は無しにしような?」
ーーえ。
「幸子がさ。俺の知らないとこで悩んだり、悲しんだりしてるの嫌なんだ。だから、出来れば色々相談して、俺を頼って欲しい」
「うん……」
繋がれた手を見つめ、やんわりと口角を上げた。
「分かった。もう隠し事はしない。これからはちゃんと言うね?」
「おう」
タクシーでコヴェント・ガーデン駅に向かい、電車に乗った。
何処に向かっているのかを訊ねると、予想通り、ホルボーンにあるお婆ちゃんの家だと言う。
ーーじゃあさっきの電話はヨーコさんか。
「今日はさ。幸子に……特別に会わせたい人がいるんだ」
「会わせたい人?」
「そっ」
そう言って檜はどこか得意げに、にんまりと笑った。
***