ボーダーライン。Neo【下】

「まだどうなるかは分からないけど。幸子の両親の承諾も要るし、多分あっちでするんじゃないかな? ロンドンに呼ぶのは遠すぎるから」

「……うーん。それもそうか。まぁ〜、また分かったら連絡して?」

「オッケー」

 僕と母さんの会話がやむのを見計らい、あの、と幸子が声を掛けた。

「結婚には……、反対されないんですか?」

 その問いに、僕はギョッとなる。

「反対? あら、どうして?」

 母さんは切れ長の目を細め、興味深く幸子を見ていた。

「あの、だって。あた、……私。檜くんより八つも年上だし。過去に担任をしていながら交際をする事も有ったので」

 言いながら幸子は俯き、赤面した。

「だから?」

「え?」

「教師をしていたからって別にそんなの、どうって事ないし。元よりアタシ、そういうかたっ苦しい考えは好きじゃないの」

「……はぁ」

「それに、檜より年上って言っても、幸子ちゃんはアタシより全然下だし。気にはしないわ」

「そう、ですか」

 ほらな、としたり顔で僕は幸子に目配せする。

 団欒とした食事が進む中、僕は冷蔵庫から三本のビールを出し、幸子にも飲むように勧めた。

 席について間なしは、まだ彼女の表情も固く、緊張感が窺えたのだが。少しのアルコールでそれも程よく解れていくようだった。

「それじゃあ、あんた達はもういいわよ?」

「え?」

「幸子ちゃん。フライトで疲れてるだろうから、二階で休ませてあげなさい」

 母さんのお開きの言葉を合図に、それじゃあと椅子を引き、幸子と一緒に部屋へ上がる事にした。

 彼女のスーツケースを二階に運び、パタンと扉を閉めると、早速とばかりに僕は幸子を抱き締めた。

 ***
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