ボーダーライン。Neo【下】
◇ ♀
部屋に入るなり、電気も点けずに抱き締められた。
彼の纏うムスクの香りがフワリと鼻腔をくすぐった。気持ちを高揚させ、うっとりと恍惚の息を吐く。広い背中に手を回し、あたしもその抱擁に応えた。
「好きだよ」
そう言って、ずっと待ち焦がれていたキスが唇に降りてくる。腰に手を添えられたまま、片手で頭を抱えられ、貪るような口付けを繰り返される。
熱い舌が口腔を探索し、あたしの舌を絡め取った。時に強く吸われ、唇を舌でなぞられると下腹部がキュンと疼き、次第に頭の芯が痺れてくる。
「……ん、ふぅっ」
容易く息が上がった。心臓がばくばくと暴れ回っていた。
深い口付けをしたまま、お姫様抱っこをされ、彼は膝にあたしを座らせたままベッドの淵に腰を下ろした。
大好きな唇が離れ、あたしはうっとりと檜の喉仏を見つめていた。彼がすぐ側にあるスイッチに手を伸ばす。微かな豆球の明かりから、パッとオレンジ色のライトに満たされる。
熱を帯びた魅惑的な瞳に、視線を絡め取られ、またキスをする。
「だめ。ドキドキし過ぎて……心臓が止まりそう」
「ドキドキしてるなら、止まらないよ」
檜は、あたしの頬にも口付けをする。
「……だって。檜とまたこんな風に過ごせるなんて。夢にも思わなかっ……ん、」
右手で顎を掴まれ、再び熱を押し付けられた。そのままあたしの頬を親指のはらで愛情深く撫でてくれる。